日本の有機農業の現在地
2022年2月に発行されたIFOAM-Organics InternationalとFiblが共同で出版した年次報告書「The World of Agriculture 2022」では、2020年段階で世界の有機圃場の面積は7490万haで世界全体の耕地面積の4.1%と報告しています。この数字は2010年の総面積約3700万haの2倍以上になっています。世界では有機農業が国の政策や民間の取り組みとして大きな流れを作りはじめています。
日本の栽培面積はここ最近有機栽培面積が上がってきましたが、世界から見ると有機農業の面積は北米やヨーロッパのみならず、アジアの国々にも水を開けられ始めています。
Organic 3.0とは?
有機農業の歴史を紐解くと、まず世界各地で有機農業そのもの、または、有機農業に繋がる思想、理論を唱えた人たちが出てきました。これがOrganic 1.0の段階です。その後、彼らの考えをまず民間で、その後、公的に有機農業を基準化したのがOrganic 2.0です。Organic 2.0によって、有機農業はある程度は広がりました。認証のための有機基準を満たすこと自体は、必ずしも容易なことでないですが、より高い持続性への取り組みへの余地が残りました。これに対して、Organic 3.0は、要約すると、より多様なアプローチで有機農業を広め、深めることで、有機農業が世界の農業の主流となり、私たちが抱える環境的や社会的な課題を克服する段階といえます。
また、残りの約95%が有機農業ではない現状を考えると、有機農業だけにアプローチしてもすべての課題を克服することはできません。Organic 3.0は生産、消費などの場での有機農業の持続可能性を高めることだけでなく、有機農業以外の農業に有機農業の原則を適用することで農業や食料システムを持続可能にすることも目指しています。
Organic 3.0の実現に向かって
では、Organic 3.0をどう実現していけばいいでしょうか?まず、知っていただきたいのはOrganic 3.0はすでにはじまっているということです。例えば、Organic 3.0では「公共調達の政策のなかで、有機の購入を義務化する」ということを提言しています。日本でもすでに一部の自治体が学校給食に有機食材を取り入れてきた実績があり、海外ではさらに有機食材の使用割合を決め法制度化している国や自治体があります。その他、Organic 3.0が呼びかけている行動は、程度の差はあれ、すでに行われていることがほとんどです。それはOrganic 3.0がはじめに公表された2015年当時からすでに時間が経っていることもありますが、有機農業を広げたいという方々の改善意識がずっと継続してあったからだと思います。
ですが、有機原則に基づいた「真に持続可能な農業体系と市場の普及を推進する」というOrganic 3.0の大きな目標の達成はまだまだ道半ばです。例として、農業・林業・その他土地利用分野の温室効果ガスの排出量は全体の1/4です。また、農業分野で環境に放出される窒素、リンなどが限界の2倍以上放出されているという問題や生物多様性の問題もあります。その点で農業分野ができることはまだまだあり、有機農業が増えることでより持続可能な社会へ進むことができるはずです。
Organic 3.0
日本語版
英語版
https://www.ifoam.bio/sites/default/files/2020-05/Organic3.0_v.2_web.pdf